今回のゲストは、覆面レスラーのグレート・サスケ選手。数々の激闘をくぐり抜けてきた身体は、まさに満身創痍でした。しかも施術の翌日には世界戦(タイトルマッチ)が控えているという状況で、緩めすぎず、けれど痛みは取る——難しい条件のなかでの施術になりました。
プロレスラーというのは、怪我が当たり前のプロスポーツですよね。
私の場合、プロレス界における「怪我のデパート」ですからね。骨折は19か所、もう数えたこともないぐらいで、それ以上かもしれません。ほかに脱臼や靭帯損傷もあります。
今、いちばん辛いのはどこですか?
対戦相手には見られたくないんですが……今いちばん辛いのは実は右肩なんです。少し脱臼気味になっていて。あとは慢性的に右膝がひどくて、もう変形して内側に曲がってしまっているんです。
右膝は、見ただけで骨の形がそのまま浮き出て、足の内側が上がってしまっているのが分かるほど。左の足首は関節が外れてしまい、歩きながら自分で入れ直しては、また外れる——そんな状態で日常を送っているといいます。
足の内側、もう上がってしまっていますね。骨の形がこのまま出て、内側にずれています。左の足首は……これは関節が外れていますね。
そうなんです。歩きながら入れて、また外れて、の繰り返しで。これなんでかって言いますと——
首から来ていますよね。
そうなんです。頸椎損傷で。プロレスは真っ逆さまにマットへ叩きつけられるじゃないですか。パイルドライバーとか。あれで頸椎の首がどんどん縮まってしまって、ひどい時にはガーンと一試合だけでやられるんですよ。
かつて大仁田厚選手とのデスマッチでは、リングの外に仕掛けられたダイナマイトの噴射の上に背中から落下。左側の肩甲骨の筋肉組織がえぐられたものの、火薬の炎が皮膚の断面を同時に焼き切ったため出血が止まり、命を落とさずに済んだ——医者も驚いたという壮絶な経歴の持ち主です。
ちょっと腕を触らせてください。これで身体の中を見抜くんです。……こっちもひどいですね。背中の方に、何か異常な箇所があります。
さすが。まだお話ししていなかったんですが、実は背中も骨折しているんですよ。
多分そこから来ていると思います。腕の前側は、全般的に異常な硬さがあります。ここ、触るだけで板みたいになっていますね。骨じゃなくて、筋肉が板みたいにすごく張っている。今までYouTubeで重症の患者さんを施術してきたなかでも、いちばん硬いかもしれません。多分、最強です。驚くぐらい硬い。
沖倉先生は、腕から頸椎へとつながる硬さをたどり、原因が首(頸椎)にあることを触診だけで突き止めます。サスケ選手は「軽く触れただけで全部お見通し。指にセンサーでもついてるんですか」と驚き、その精度を「まさに指先がMRI」と表現しました。
明日、試合なんです。緩めすぎると困るというのはありますか?
そこが大事なところです。試合前に急にふにゃふにゃに緩めてしまうと、パワーが発揮できなくなる。だから、ストレッチみたいなことはやっちゃいけないんですよ。
私も経験があります。試合の1時間ぐらい前に左右のバランスを取ってもらって、すごく楽になったんですが、緩めすぎて……得意技の回し蹴りが全くふにゃふにゃになって、決まらなかったんです。
まさにその理論です。ストレッチは筋肉を伸ばしているだけで、伸ばすとパワーは出ない。ただ、この身体の中には「癒着」があるんです。癒着があると、本来100%収縮してくれる筋肉の力が、50%や40%に妨げられてしまう。相手に加える力も弱くなる。だから根本の施術としては、癒着を剥がすことにフォーカスしていきます。そうすると、逆にパワーが出やすくなるんです。
首は損傷が深く、普通に攻めて緩めてしまえば致命的になりかねない——明日の試合も危うくなる。そこで沖倉先生は、首を直接緩めるのではなく、足や背中といった離れた部位から入り、首へつながる癒着だけを狙う方針を選びました。
外から行きます。……これはやっぱりひどいですね。腕、こんだけしか上がらない。動かすだけで関節がゴキゴキ言い出す。ちょっと私ですら怖いくらいです。すみませんが、横に自分で上げていってもらえますか?
もう、これが限界です。痛いです。
この腕が繋がっているのが、肩甲骨の内側、まさに頸椎の部分。首の骨と肩甲骨の内側です。そこをしっかりやらないと、腕は上がるようにならない。反対側の背中も気になるので、そちらから施していきます。
背中の癒着を抜くと、指がスーッと入っていく感覚があるといいます。過去に潰れて変形した背中の骨の周りには、癒着の痕がびっしり。ここを取れば「足の力が70%から100%になる」と沖倉先生。膝については、靭帯が緩んで試合ではテーピングが欠かせない状態のため、直接は触らず、膝に負担をかけている癒着だけを離れた場所から抜いていきます。
膝は直接やっちゃダメです。緩んでいる膝をさらに緩めることになってしまう。膝に来ている原因の癒着を、こっちから抜けば、膝は楽になります。……はい、これで膝、軽くなっていますよ。
おお。瞬間的に、柔らかくというか、楽に。
うわあ、すごい。身体がだいぶ楽になった。……もう1cm、身長が伸びました。
高くなっていますね。だいぶいい感じです。右足にも力が入るようになっています。癒着があった部分ですね、蹴りやジャンプの動作で、右足の力がついてくると思います。
実は先ほどまで、階段を上がるにも一苦労するくらいだったんですよ。それがもう消えました。膝の痛みも、今は全くないです。すごく滑らかになっています。
腕も、もう引っかかっていませんね。横からも上げてみてください。
ああ、上がりますね。先ほど「痛い痛い」と言っていたのに。感動です。胸椎がすっごい今、楽なんですよ。
姿勢も変わりました。縮こまっていた首が起き上がり、胸が入って、背筋がピンと伸びる。来た時とは印象がまるで違います。そしてサスケ選手が驚いたのは、自分では訴えていなかった胸椎の違和感まで消えていたことでした。
実は長年悩まされていた、この胸椎の違和感やだるさが、すっかり取れました。「肩だ、足だ」としか申し上げていなかったのに、そこまで探り当ててくださって。毎日ストレッチしても、30分経つとすぐ戻ってしまっていたのに——今はすごく楽です。
プロレスは、真っ逆さまに叩きつけられる技もありますよね。首への負担はどれくらいですか。
パイルドライバーなんかで頸椎がどんどん縮まって、ひどい時は一試合でガーンとやられます。首から来ているのは自分でも分かるんです。
腕を触らせてください。……前側が全般的に、板みたいに硬い。これは頸椎、首の中に入っているのが原因ですね。
軽く触れただけで、そこまで分かるんですか。指にセンサーでもついているみたいだ。
センサーがついていると言えば、ついていますね。ただ、首を普通に攻めて緩めると致命的になりかねない。明日の試合ができなくなってしまう。だから足から、安全にやっていきます。
緩めすぎは怖いです。以前、試合前に緩めてもらって、回し蹴りがふにゃふにゃで決まらなかったので。
その通りなんです。ストレッチは筋肉を伸ばすだけでパワーが出ない。私は癒着だけを狙って剥がします。癒着で50%まで落ちていた収縮の力を、100%に戻す。むやみに緩めるのとは逆の考え方です。
なるほど。だから緩めるんじゃなくて、剥がす、と。
そうです。骨折が多いと、そこから出血して炎症が起きる。炎症が起きると、カサブタのように癒着ができてしまう。組織がくっつくと筋肉が収縮できず、筋力が落ちる。炎症を起こすほど筋力が弱る、負のサイクルです。
まさに私が陥っていた状態ですね。
背中の骨も、潰れて変形しています。ここの癒着を取れば、足の力が70%から100%になります。膝は直接触りません。緩んでいる膝をさらに緩めてはいけないので、原因の癒着だけを離れた場所から抜きます。
お願いします。……あ、瞬間的に膝が楽になった。
起き上がってみてください。姿勢も見ましょう。
首が起き上がって、胸が入って、背筋が伸びている感じがします。来た時と全然違う。今日、探せる限りの癒着を取っていただいて、本当にありがとうございます。
こちらこそ。憧れのグレート・サスケ選手の身体を触らせていただきました。探せる限り、全部取りましたよ。
むちゃくちゃ調子いいです。指先がMRIですね。明日のタイトル戦、これは勝ちますよ。
過去最凶クラスの癒着という悩みを抱えた方の症例です。19か所の骨折!という生活上の困りごとから、問診と動作検査、施術前後の変化までを紹介しています。
六層連動操法は、痛みの原因を痛む場所だけに求めません。皮膚から骨まで六つの層の癒着や、筋膜のつながりをたどり、離れた部位(お腹・胸郭・首・過去の手術痕など)から動きを取り戻します。この症例でも、痛む場所とは別の部位に着目して施術しています。
六層連動操法は、セミナーを修了した認定施術者が全国・海外の治療院で行っています。お近くの認定治療院は「全国の治療院」ページからお探しください。