今日はどんなところがつらくて来られましたか。
坐骨神経痛と、骨盤——仙腸関節の痛みです。転職した先で残業がずっと続いて、それから神経痛が悪化しました。
残業はどのくらいだったんですか。
月に120から140時間くらいです。それが続いたら、引きちぎれるような痛さと、電気が走るようなパチパチした痛みが出るようになって。
転職先での長時間の残業が引き金になり、坐骨神経痛が一気に悪化。前屈でお尻を曲げると仙腸関節のあたりに「引きちぎれるような」激痛と、電気が走るしびれが出るようになりました。悪化後は4ヶ月半ほぼ寝たきり。仰向けではお尻が圧迫されて眠れず、1年半のあいだ、1日20時間をうつ伏せで過ごしていたといいます。35歳で寝たきりになり、今は39歳。「30代を棒に振ってしまった」という悔しさと焦りを抱えて来院されました。
日常でいちばん困っていること、つらいことは何ですか。
物が落ちると取れないんです。かがめない、曲げられないので。だから目標は、しゃがんで物が取れるようになることです。
立っているとき、座っているとき、寝ているとき——どれがつらいですか。
立っても座っても寝てても辛いです。1ヶ月前からは右足にも同じ症状が出始めました。膝裏や土踏まずのあたりは、30分くらいするとしびれが出てきます。
前屈でお尻に体重がかかると激痛が出るため、5年近く「曲げる」動作を避けて生活してきました。仰向けで寝るとお尻が圧迫されて神経痛が出るので、うつ伏せで過ごすしかない。座ると体重がかかるのが怖くて、座ること自体を避けていたそうです。
では、前屈してみましょう。物を取るつもりで、できるところまで。
これが限界です。これ以上は怖くてできません。5年間、曲げられていないので。
そこからしゃがむことはできないんですか。
もう筋肉がなさすぎて、脚がプルプルしてしまうんです。ストンと落ちそうで怖くて。
前屈はごくわずかで限界。しゃがもうとすると脚が震え、その場に崩れ落ちそうになります。仙腸関節のあたりが強く突っ張り、伸ばされる感覚が痛みに直結していました。沖倉先生は、これは筋力の問題ではなく、神経の圧迫症状だと見立てます。神経がきちんと働き出せば、しゃがめるようになる——そのためには、圧迫を生んでいる癒着を取る必要がある、と話します。
お医者さんには、多分これは脳に問題があるんじゃないかと言われました。神経が過敏になっていて、脳が過剰に反応して痛みを強くしているんだろう、と。
痛みが変化しないと、すぐ「脳の問題」「先進的な問題」と言われがちなんです。でも私からすると、痛みには必ず、身体のどこかに原因があります。癒着があって、それが逆に脳を発火させている。だから、その癒着を取れば脳の過剰な反応も抑えられて、神経痛も少しずつ消えていく。そういう例は何度もあります。
触ってみると、骨盤よりも上のほうが問題ですね。膜が痛いでしょう。これが骨盤に来ている。だから骨盤の中を最初にやると、ただ痛いだけになる。触らないほうがいい。
そうなんです。だから背中もよく痙攣するんですけど。
残業で座り続けた姿勢もありますが、それ以上に、夜ずっと起きていること自体が良くない。免疫が落ちれば内臓もやられます。今回は特に、肺のほうの癒着がすごく強かった。そこから仙腸関節、骨盤、そして足へと痛みが波及していました。
痛みが出ている仙腸関節やお尻ではなく、沖倉先生が着目したのは胸郭——特に肺のまわりの強い癒着でした。長時間残業と睡眠不足が続いたことで内臓に負担がかかり、胸のあたりが固まる。その引っ張りが横隔膜・胃を通じて骨盤・仙腸関節へ及び、坐骨神経を圧迫していたという見立てです。
神経がかなり過敏になっているため、極力注意しながら胸のまわりの硬さから施術を進めます。しばらくすると、あちこちで「ボコっ」「プチプチ」という感触が。土踏まずのあたりでもプチッと音が鳴り、癒着が少しずつ外れていきました。
今、大きいのが抜けましたね。
あ、なんか軽いです。かなり。
ちょっと立って、しゃがめるか試してみましょう。尻もちをついていいので、無理はしないで、どのくらいまでできるか。
あ……できた。足首も曲がる。
できるね。恐怖心がなくなったら、もっとできますよ。重心移動が苦手になっているから、これはリハビリの訓練だと思って、左右両方でやってみましょう。
あ、できた。……マジか。嬉しいです。
もう一回やってみてください。……おお、スムーズになりましたね。
なりました。全然変わりました。
座るのがつらいという話でしたね。体重をかけてみて、どうですか。
あ、違和感ないです。引っ張られている感じが少なくなりました。
怖くて避けていたしゃがみ込みができ、避けていた「座る」動作でも違和感が消えていました。何より、4年半できなかった「物を取る」動作が、その場でできるように。沖倉先生は、固まっていた範囲を改めて説明します。骨盤の中、仙骨の周辺、そして剣状突起——胸骨の真ん中、心臓が入っているあたり——から横隔膜・胃にかけてが強く固まり、心臓に負担がかかって、それが骨盤へ及んでいた、と。伸ばす力も、癒着が取れれば自然に戻ってくると話しました。
改めて、いちばんの目標は何でしたか。
しゃがんで、物が取れるようになることです。落ちた物が取れなくて、5年間ずっと困っていました。
前屈すると、どこが痛みますか。
全部曲げると、お尻——特にこの仙腸関節のところに、引きちぎれるような痛みと、パチパチと電気が走る感じが出ます。
寝るときはどうしていたんですか。
仰向けだとお尻が圧迫されて、そのままでは寝られなかったんです。だから1年半、1日20時間くらいうつ伏せで過ごしていました。神経痛が出ない向きになるまで、何度もチャレンジして。
それは衝撃ですね。……触ると、胸のあたりがすごく固まっています。ここ、固いでしょう。
はい、固まってます。胸なんですね、全く予想してませんでした。
神経が過敏になっているぶん、普通の人より痛みが出やすい。だから極力注意しながら、少しずつ癒着を外していきます。……今、ボコっといきましたね。癒着が取れた音です。
わかります、わかります。土踏まずのあたりでプチっていうのも。
では立って、足首と、しゃがみを試しましょう。尻もちをついてもいいですから。
あ、足首ができる……しゃがめた。何年ぶりだろう。
恐怖心と、重心移動が苦手になっているだけです。左右で練習すれば、もっとスムーズになりますよ。
できました。嬉しいです。
今日、六層連動操法を受けてみて、どんな感じでしたか。
体が軽くなりました。座っていて痛みが減って、今はあまり感じないのが大きいです。物を取る動作なんて、4年半ぶりにできました。本当にびっくりしました。
残業続きで睡眠不足になって、炎症が起きて、心臓に負担がかかって……という流れでした。脳から痛みが来るという話も、動けるようになった今なら、そうではなかったと分かると思います。この一時間で、曲がるようになりましたからね。早く社会復帰していただきたいと、本当に思います。
頑張ります。本日はありがとうございました。
坐骨神経痛という悩みを抱えた方の症例です。残業140時間、30代で寝たきりを経験した方という生活上の困りごとから、問診と動作検査、施術前後の変化までを紹介しています。
六層連動操法は、痛みの原因を痛む場所だけに求めません。皮膚から骨まで六つの層の癒着や、筋膜のつながりをたどり、離れた部位(お腹・胸郭・首・過去の手術痕など)から動きを取り戻します。この症例でも、痛む場所とは別の部位に着目して施術しています。
六層連動操法は、セミナーを修了した認定施術者が全国・海外の治療院で行っています。お近くの認定治療院は「全国の治療院」ページからお探しください。