8年前に中咽頭がんの手術を受け、その後に放射線治療をされたんですね。
18時間に及ぶ手術でした。傷口を太いナイフで刺され、えぐられるような痛みが続きました。
今回のクライアントさんは、25年間オステオパシーに携わってきた施術家。手術後にリンパ節への転移と再発を経験し、放射線治療と抗がん剤治療を継続しました。痛みは次第に、首の筋肉が縮むような強い引きつれへ変化。メニエール病や味覚障害も重なり、苦しい8年間を過ごしてきたといいます。
首の左右回旋、側屈、後屈を確認すると、いずれも動く範囲が小さく、身体ごと回さなければ横を向けない状態。腰や背中にも突っ張るような違和感がありました。
首の前が引っ張られ、波打つような感じがあります。半ば諦めていました。
杖なしでも歩けるものの、足裏が地面につく感覚が乏しく、膝がガクッと抜けそうになることも。階段、とくに下りでは恐怖感があり、杖を使う方が安定していました。
喉から胸の奥が非常に硬いです。前側から引っ張られ、胸と首の両方が短くなっています。
沖倉先生は、手術・放射線治療を受けた喉だけでなく、胸郭、横隔膜周辺、腹部から脚へ続く筋膜の連続性を確認。硬くなった場所へ角度を変えながら、慎重に施術していきます。
すごいですね。もうすでに首が軽くなっています。狙っている場所が徐々に溶けるような感覚です。
首の硬さが胸郭へ波及し、脚の筋肉も使いにくくなっていました。全身のつながりをほどいています。
立ち上がって歩くと、足運びは施術前より滑らかに。階段も手すりへ強く頼らず上がれるようになりました。首の左右回旋、側屈、前後屈も、施術前とは明らかに異なる動きを見せます。
足の裏がしっかり地面についています。首も楽です。8年間の中では、今が一番解放されています。
胸の奥と首の前が剥がれていくのが分かりました。呼吸もものすごく楽です。
手術後、首の痛みはどのあたりから始まりましたか?
喉の傷の周辺からです。首の前が縮み、奥へ引き込まれるような痛みが残りました。
放射線治療を終えた後も、硬さや引きつれは変わりませんでしたか?
時間がたてば落ち着くと思っていましたが、むしろ首から胸まで固まっていく感じでした。
日常生活では、どんな動作がいちばん不自由ですか?
振り向く時に首だけでは動けません。身体ごと向きを変えますし、上を向くのも怖いです。
歩く時に杖が必要になったのは、痛みだけでなくふらつきもあるからですね。
はい。足が地面についている感じが薄く、段差や人混みでは特に不安でした。
まず首を右へ向けてください。次に左、上、下も無理のないところまで動かします。
右も左も途中で止まり、首の前が強く引っ張られます。下を向く時も胸までつれます。
腕を上げる動きでも、胸の前と喉が一緒に引かれています。
首だけの問題だと思っていましたが、腕を動かしても同じ場所が痛むんですね。
今度は立って足踏みをしましょう。左右で足裏の接地感に違いはありますか?
右足が頼りなく、身体が横へ流れます。杖がないと真っすぐ立ちにくいです。
手術痕から胸郭の奥へ続く硬さが、体幹と脚の使い方まで制限しているようです。
喉の傷が歩き方まで関係するとは思いませんでした。
傷そのものを強く押さず、周囲から胸の深部へ続く組織の滑りを少しずつ作ります。
触れられている場所は強くないのに、首の奥がじわっとほどけていきます。
呼吸に合わせて胸郭が動き始めました。息の入り方はいかがですか?
胸の上だけで吸っていたのが、今はお腹まで空気が入る感じです。
一度座って首を回しましょう。最初に止まった位置と比べてください。
後ろが見えます。引っかかりも痛みもかなり少なく、首だけで振り向けます。
最後に立って歩きます。急がず、足裏の感覚を確かめてください。
杖へ体重を預けなくても歩けます。両足が地面をつかみ、身体の軸が戻ったようです。
8年かけて身体が覚えたかばい方もあります。今日動けた範囲を基準に、痛みやふらつきがどう変化するかを丁寧に見てください。
諦めていた時間が長かった分、この軽さが信じられないほどです。首を動かすことにも、歩いて外へ出ることにも希望が持てました。
※動画で紹介しているのは個人の施術経過です。がんそのものを治療するものではなく、効果には個人差があります。治療中・治療後の症状は主治医へご相談ください。