全身がつるんです。ふくらはぎだけじゃなくて、お腹も背中も。ここ(胸のあたり)がつると、もう息ができなくて苦しい。寝たまま動けなくなってしまうんです。
それは相当おつらいですね。お仕事は介護福祉士さんでしたね。
介護福祉士として働く女性。40歳の頃から交通事故に複数回あい、右肩をスライドドアに挟まれて入院、自転車事故では胸部を強打して上半身をコルセットで固めたこともありました。職場で転んで1年間リハビリを受けたときも、打ったのは右側。そして2023年から2024年にかけて移った新しい職場では、階段の上り下りの負担が大きく、頸椎・腰椎を痛めてしまいます。全身が筋肉痛のように痛み、吐き気も強く、トイレへ移動するのがやっとという状態でした。
実はその後にコロナにかかって、100日咳になってしまって。ずっと咳をし続けて、肋骨が折れてもおかしくないと言われたくらいでした。それ以来、お腹がつるようになって、今もつるんです。
咳の衝撃がずっとお腹や胸に残っているんですね。今も痛みはありますか。
胸も未だにシクシク痛みます。背中がつると仕事に行けなくて休むしかなくて、携帯で「すみません、休みます」と連絡する状態です。背中がつるのが一番で、ひどいと1日中つっています。
つりは、ふくらはぎのような分かりやすい場所だけではありません。お腹や胸、背中、脇のリンパのあたりまで、体のあちこちが次々と連鎖してつっていきます。ふくらはぎがつるだけでも普通の人はつらいものですが、それが胸やお腹に来ると、息もできないほどの激痛になる——本人はそう訴えます。つった後は今度は伸ばすことができず、しゃがむと立ち上がるときに「よし」と覚悟をしないと立てない。膝も言うことをきかず、座り続けると吐き気が出る。日常のあらゆる動作が、痛みとつりに縛られていました。
まず、ここまでしゃがんでみましょう。左側に体重をかけて、もう一度立ってみてください。無理はしないで。
痛たた……。普通には立てないです。右に体重をかければ、なんとか。手で押せば、なんとか立てます。
しゃがみ込みから立ち上がろうとしても、左に重心を移すと立てず、右へ体重を逃がし、手で押してようやく立てる状態でした。沖倉先生が脚を持ち上げて力の入り具合を確かめると、片側は「触っているだけ」のようにまったく力が入らず、脚そのものがずっしりと重い。横になっているだけで脚がつってしまう場面もありました。仰向けで自分から脚をまっすぐ上げてもらうと、ほとんど上がらず、途中で強い制限と痛みが出ます。つりも筋力低下も、片側・内側・骨盤まわりに偏り、左右のバランスが大きく崩れて全身が固まっていました。
えっ、脚って普通は上がるんですか。全然上がらないです……。
普通は上がります。今はここで止まってしまいますね。力が出ないのには、はっきりした原因があります。
腰のしびれがとても強く出ていますね。脚のしびれもここから来ています。しびれというより、分厚い膜が張ったような、ボワンとした感覚ではないですか。
そうなんです。しびれというしびれじゃなくて、ボワンとした感じで。今日は朝からずっとそうでした。
度重なる事故や、咳の衝撃で、深いところの組織が固まって癒着してしまっています。腕が上がらないのも腕のせいではなく、首の深い筋肉。脚に力が入らないのも脚ではなく、腰やお腹の奥です。ここの癒着がひどすぎて、力が伝わらなくなっているんです。
痛い場所やつる場所を直接もんでも、この状態は変わりません。沖倉先生が着目したのは、過去の衝撃が積み重なってできた深層の固着でした。組織どうしがくっついて滑らなくなり、脳からの指令が筋肉に届かない。だから、どこを触っても痛く、脚は重く、指一本の力にも抵抗できなくなっていたのです。
沖倉先生は、最も制限をかけている一点をていねいに探しながら、深く固まった部分を少しずつゆるめていきます。強くもみほぐすのではなく、癒着している層を上から順にとらえて解いていく施術です。
あ……直接触られている感覚が戻ってきました。分厚かったのが、一枚剥がれたような感じがします。
だんだん変わってきましたね。これで足の筋力も出るようになりますよ。
筋肉が柔らかくなってます。さっきはどこを触っても痛かったのに、今は痛くないです。不思議……。
腕が上がらないのは、この首の筋肉なんです。ほら、だいぶゆるんできたでしょう。
……ない。硬いところがないです。油のように溶けちゃったみたいで、ふにゃふにゃになっちゃいました。軽い。
施術後、止まっていた腕がまっすぐ真横から上がり、重さも制限も消えていました。脚の筋力テストでも、指一本の力にすら負けていた脚が、しっかり踏ん張れるように変わります。そして、しゃがみと立ち上がりを試すと——。
もう一度、脚を上に上げてみてください。指で押しますよ。
あ、力が入ります。入る、入る。というか軽いです。さっきの10倍くらい力が入ってます。
さっきは指一本、乗せているだけでも立てませんでしたね。それだけ力が出ていなかったんです。では、しゃがんで立ってみましょう。
しゃがむとずーんと膝が痛くて、上がるときにぐーって痛くて立てなかったんです。……あ、行けます。嘘、こうやって手で押さないと立てなかったのに。全然どこも痛くない。膝も痛くないです。
長年の膝の痛みだったんですよね。
そうなんです。腰もすごく軽い。なんだか夢のようです。
これまで、どんなところに通ってこられたんですか。
群馬まで毎月毎月通っていました。治療院や電気治療、整体をあちこちで受けて、ものすごくお金もかかって。それでも「治らない」と言われ続けてきたんです。
長く付き合ってこられたんですね。
「もう治りませんよ」と言われてしまうと、自分の体と仲良くしていくしかないんだ、受け入れるしかないんだと、諦めていました。
まず、体のどこがつるのか教えてください。
内側なんです。内側から真ん中にかけて。外側はそんなにないんですが、右側は全部つって、左とは全然ちがいます。
左右のバランスがかなり崩れていますね。全身も固まっています。ここまでしゃがんで、左重心でもう一度立ってみましょう。
痛たた……。無理です。右に体重をかけて、手で押せばなんとか。
脚の力を見ますね。……こちらは全然入りませんね。触っているだけのようだ。すごく重たい。だから立ち上がるときに踏ん張れないんです。
横になっただけでつっちゃいました。なんでだろう、こんなはず……いえ、いつもこうなんです。
腰のしびれが強いですね。ここを解いていきます。上から触りますよ。
今日は朝からずっとしびれていました。……あ、抜けました。筋肉が柔らかくなってます。もうどこを触っても痛かったのに、今は痛くないです。
腕で言うとこの筋肉、首で言うとここなんです。触っていた方が分かりやすいですね。ほら、緩んできたでしょう。
硬いところがないです。油みたいに溶けちゃった。軽い。まっすぐ真横から腕が上がるし、重さもないです。
もう一度、指で押します。さっきはこれで立てなかった。今は?
力が入ります。10倍くらい違う。あ、痛くない。さっき先生が指一本で押していただけだったなんて。じゃあ、私の体は異常だったんですね。
力が全く出ていませんでしたからね。それだけ重たかったんです。しゃがんで立ってみましょう。
あ、行けます。膝が全然痛くない。腰も軽い。今日治らなかったらどうしよう、無理ですよって言われたらどうしようと、ドキドキしながら来たんです。先生に出会えて、本当によかったです。夢のようです。
全身連鎖のつりという悩みを抱えた方の症例です。息もできない程の激痛と筋力低下という生活上の困りごとから、問診と動作検査、施術前後の変化までを紹介しています。
六層連動操法は、痛みの原因を痛む場所だけに求めません。皮膚から骨まで六つの層の癒着や、筋膜のつながりをたどり、離れた部位(お腹・胸郭・首・過去の手術痕など)から動きを取り戻します。この症例でも、痛む場所とは別の部位に着目して施術しています。
六層連動操法は、セミナーを修了した認定施術者が全国・海外の治療院で行っています。お近くの認定治療院は「全国の治療院」ページからお探しください。