脊柱管狭窄症は、いつ頃からですか。
4年ほど前からです。最初は歩けないくらいで、歩いていると脚がしびれてくるんです。
71歳の男性。この年の1月に胃がんで胃を全摘する手術を受けたばかりでした。手術のあとから背中と腰に重たい痛みが出はじめ、脚には歩くとしびれが走ります。少し歩いては休む、いわゆる間欠性跛行の状態で、付き添いのご家族が「歩けるだけでも歩いてほしい」と願って来院されました。
足の指で踏ん張るようにして歩いています。かがむこともできませんし、大股で歩くのも、走ることも全くできません。
15分、20分と指先だけで踏ん張っているので、脛の前のところが痛くて痛くてしょうがなくなるんです。
車での移動もひと苦労でした。30分ほど休んで外に出た途端、急に脚に痛みが走り、一歩を踏み出そうとしても動けなくなる。目的地までに何度も車を停めて休みながら向かうといいます。手術の前には無かった背中と腰の重い痛みも、術後にはっきりと出るようになっていました。
病院では、脊柱管狭窄症の手術を勧められたんですね。
はい。でも「手術をすれば治るのか」と尋ねたら「分からない」と言われて、そのままになっているんです。
歩くときは何かにつかまっていないと怖く、手を離せないといいます。バランスが崩れるとグラグラと揺れてしまうためです。片足立ち、体幹の回旋は左右とも確認でき、続いて前屈と後屈を診ていきます。
前にかがむと、足で踏ん張っていても、なんだかふらつく感じがします。
では腰に手を当てて、後ろへ反ってみましょう。どうですか。
この腰の、ここだけが痛い感じですね。
脚の内側の筋肉がとても突っ張っていますね。股関節の前側、脚の前側です。この内転筋が背中までつながっていて、さっきおっしゃっていた背中の痛みと、脚の筋肉がつながっているんです。
お腹でいうと、ちょうど胃のところに続いています。
へえ、お腹ですか。ずっと足ばかり気にしていました。
脚を上に上げてもらうと、ほとんど上がりません。指1本で軽く押しただけで、力が入らずすとんと落ちてしまいます。沖倉先生は、胃の全摘手術のあとに深いところで起きた癒着に注目していきます。
胃を摘出したことが大元です。がんになるほど胃の周りに炎症が起き、組織が硬くなっていく過程で、変なところ同士が癒着してしまう。それが脚まで波及しているんです。
脚や腰を直接ほぐすのではなく、胃の手術後に固まった腹部と骨盤内のつながりから、慎重にゆるめていきます。
ぎゅっと抑えられて、重たい鈍い感じがします。痛みはないんですが、ドーンとくるような。そちらを押してもらうと、外側の筋肉がバーッと、脚がしびれるような感覚が来ますね。
筋肉自体が変な反応をしています。痙攣する手前くらいですね。まだ硬いものが残っているので、そこを取り切っていきます。
硬く張りついていた部分が弾けるようにゆるみ、少しずつ動きが戻っていきます。
体が伸びてきたような気がします。
伸びてきた感じ、しますよね。では脚の方、分かりますか。自分で上げてみてください。
あ、上がる。だいぶラクに歩けるようになりました。
さっきまでは膝を曲げながら踏ん張っていた脚が、まっすぐ伸びるようになりました。特別な突っ張りも感じません。手すりに強く頼らなくても、安定して歩けそうです。あらためて動作を確認していきます。
まず左に回旋。腰の痛みは。
全然いいです。
前屈、後屈もどうぞ。さっきは腰が痛いと言っていましたが。
大丈夫です。痛くありません。
では無理のない範囲で、左脚を上げてみましょう。反対側も。
上がります。さっきとは全然違いますね。
見違えるほど脚が上がるようになりました。付き添いのご家族も「前は歩きにくそうで、その姿を見るのが痛々しくて辛かったんです。今の様子を見て、本当に安心しました」と声を詰まらせていました。
脊柱管狭窄症は4年前からで、歩くと脚がしびれてくるんですね。
はい。足の指で踏ん張って歩くしかなくて、15分か20分もすると脛の前が痛くてしょうがなくなります。かがむのも、大股で歩くのも、走るのもできません。
1月に胃の手術をされてから、背中や腰の痛みも出てきたと。
そうなんです。手術のあとに癒着があると言われて、この背中と腰のあたりに、前は無かった重たい痛みが出るようになりました。
歩いているときは、どんな感じですか。
体重を真下にかけると上がっていくんですが、バランスが崩れるとグラグラして。しっかり握っていないと怖くて、手を離せないんです。
では動きを見ていきましょう。片足立ち、回旋、前屈、後屈……。後ろに反ると、腰のここだけが痛みますね。
そこだけです。前にかがむとふらつく感じもあります。
脚の内側の筋肉がすごく突っ張っています。この内転筋が背中につながっていて、さらにお腹の、ちょうど胃のところに続いているんです。だから痛む脚だけでなく、お腹の方を診ています。
足ばかり気にしていました。まさかお腹につながっているとは。
脚を上げてみてください。……指1本で押しただけで落ちてしまう。力が入らない状態です。癒着の量が多く、体の深いところで固まっています。胃を摘出したこと、もともとの胃の炎症が進んで、膜同士が癒着し、それが脚まで波及しているんですね。
押されると重たい鈍い感じで、脚の方までしびれるように響きます。痛みはないんですが、不思議な感覚です。
硬いところがゆるんできました。もう一度、自分で脚を上げてみてください。
あ、上がる。脚がぐーっと伸びます。だいぶラクに歩けるようになりました。
腰の痛みも、腹部から骨盤にかけての癒着から来ていました。そこがゆるむと、坐骨神経痛のようなしびれや腰の痛みも軽くなります。脚の前側の硬さも、もとは胃の方から来ているんですよ。
こういうやり方は見たことがありませんでした。横になりながら、どうしてお腹の方を触るのかなと思っていたんです。足のことばかり考えていましたから。汗びっしょりですが、本当にびっくりしました。
胃全摘後・脊柱管狭窄症という悩みを抱えた方の症例です。胃がんで全摘出を経験後、腰痛と脚のしびれに悩む71歳という生活上の困りごとから、問診と動作検査、施術前後の変化までを紹介しています。
六層連動操法は、痛みの原因を痛む場所だけに求めません。皮膚から骨まで六つの層の癒着や、筋膜のつながりをたどり、離れた部位(お腹・胸郭・首・過去の手術痕など)から動きを取り戻します。この症例でも、痛む場所とは別の部位に着目して施術しています。
六層連動操法は、セミナーを修了した認定施術者が全国・海外の治療院で行っています。お近くの認定治療院は「全国の治療院」ページからお探しください。
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