今、一番つらいのはどのあたりですか。
ヘルニアで27歳のときに一度手術をしたんですけど、2〜3年してからまた腰が痛くなって。今から5年前に圧迫骨折もして、それからだんだん歩けなくなりました。
腰椎の1番のところを、圧迫骨折されたんですね。
そうです。お医者さんからは脊柱管狭窄症と言われて。1年半ほど前に近所の別の整形外科でセカンドオピニオンを受けたら、今度は強い後湾症だと言われました。
長い距離を歩けないのはもちろん、ひどいときは1〜2分立っているだけで、それ以上は立っていられなくなる。一度腰を下ろして座ると、また少しの間はしのげる——そんな毎日が続いていました。
歩き始めは痛みゼロなんです。でも1〜2分すると、痛みのマックスを10とすれば、一気に10まで上がってしまう。それで座ると、またゼロに戻るんです。
それだけの状態で、病院では再手術の話にはならなかったんですか。
今の状態ではどう手術すればいいか分からない、と言われてしまって。まずは減量してみようということで、今、本格的に減量を始めているところです。
まずは体の状態を見るために、実際に立ってもらいます。立った直後は「今は痛みゼロ」。ところが、そのまま時間が経つのを待つと——。
……痛くなってきました。(苦笑)
全然、時間は経っていないですよね。立つことで組織が圧迫され、血流が阻害されて酸欠のような状態になり、背中が痛くなっている。だから座るとすぐ楽になって、また2〜3分立つと痛くなる。いわゆる脊柱管狭窄症の代表的な症状ですね。
そうです、まさにそうです。
体を確認していた沖倉先生の表情が、ふと険しくなります。膝が伸びず、骨盤が大きく後傾し、第5腰椎が後ろに飛び出すように潰れている——その負担を背骨全体でかばっている状態でした。
膝がもう伸びないですよね。骨盤がすごく後傾していて、第5腰椎が後ろに飛び出すような格好になっている。ここに強い張りを作って、それを胸で頑張って支えている状態です。
そうそう、まさしくそうです。
背骨は本来、前へ弯曲していないといけない。それが後ろに丸くなってしまって、椎体が後ろで潰れている。だから、この背中をこのまま緩ませてはいけない。今見つけたのは、前側の内転筋——内ももの制限因子が強いので、まずここから攻めていこうと思います。
痛む腰そのものではなく、離れた内もも・足・肋骨から。背中を支えている筋肉をむやみに緩めれば、姿勢が保てず、かえって腰が痛くなる。だからこそ、痛みの出どころにつながる制限を、離れた場所から丁寧に外していきます。
小指側にこういう緊張があるの、分かりますか。これが奥の方で、後ろのハムの筋肉に伝わっている。ここが取れると、変わってくると思います。この奥の筋肉、いつも自分でつらいと感じている筋肉ですよね。
はい……、そうです。
この1本だけ抜きます。ふらつきは少し強くなるかもしれないけれど、痛みは取れると思います。今やったところは外れました。肋骨の奥にもあって、ここは咳やくしゃみのときに響いてくるところ。ここも外していきます。
横向きのまま、女性は何度もうなずき、だんだん表情が明るくなっていきます。
抜きすぎると、後で立ってもらうときが怖い。だから今日はこの2つだけにします。施術はこれ以上はしません。今、必要があって固めている筋肉があるので、そこまで抜いてしまうと後ろにふらついて姿勢が悪くなり、かえって腰が痛くなる原因になってしまうんです。
もう一度、立って確かめてもらいます。
軽い、本当に軽くなりました。施術しているときに「あれ?(痛みが引いた)」って思ったんです。
本当ですか。いけましたね。
施術前は、少し立っただけですぐに痛みに襲われていた女性。この日は、しばらく立っていても持ちこたえられるようになりました。
今、減量のお薬は何か使っていますか。
いえ、今は食事制限だけです。糖尿でも高血圧でもないので薬は使っていません。一度飲んでみたことはあるんですけど、すごく体に合わなくて、吐き気と気持ち悪さがひどくて。
最近よく言われるGLP-1のようなお薬ですね。合わないと本当につらいですよね。今回、痛みの要因はこちら側にもあります。ここは外せるけれど、姿勢そのものを変える要因は別にある。第5腰椎の後ろが潰れて、後湾の方向へ引っ張られているのが大きいんです。
背中が丸くなってしまっているのは、自分でも感じていました。
上半身の体重が、めちゃくちゃお尻のここに乗ってきているんです。歩かないので、支えるための足やお尻の筋肉がだんだん細くなっている。本来はその筋肉が張りを作って、腰のカバーにもなるんですが、そのカバーの材料が今は作れていない状態です。
歩けないから、余計に弱っていってしまうんですね。
そうなんです。ダイエットで減量しようとすると、やればやるほどタンパク質が減って、筋肉量が落ちてしまう。筋肉が落ちると、骨粗鬆症の原因にもなる。これが一番避けたいところです。だから、つらくてもコルセットを使いながら、できるだけ努力して歩く。歩くのが一番いいんです。
立ってみると、さっきより軽いです。ただ、今ぐらいでまた張ってきた感じもあって……。
まだ大丈夫、そこまで痛くはないですよね。筋肉を使えていないので、どうしても張ってはくる。ここから先はやってみないと分からない部分もあります。でも、合わないかもしれないと思って何もお伝えしないでいたら、どんどん悪い方向へ進んでしまう可能性がある。今日をきっかけに、いい方向へ行ってくれたらと思っています。
来た甲斐が少しでもあって、よかったです。私も、藁にもすがる思いだったので。
分かります。根本の解決までは今日一日ではいかないかもしれない。でも、進むべき方向ははっきりしています。その方向へ進めば、間違いなく良くなっていきますから、一緒に頑張っていきましょう。
やりたいことがいっぱいあるのに、何もできないのが情けなくて……。今日は本当に、ありがとうございました。
脊柱管狭窄症という悩みを抱えた方の症例です。5分も歩けない超激痛!という生活上の困りごとから、問診と動作検査、施術前後の変化までを紹介しています。
六層連動操法は、痛みの原因を痛む場所だけに求めません。皮膚から骨まで六つの層の癒着や、筋膜のつながりをたどり、離れた部位(お腹・胸郭・首・過去の手術痕など)から動きを取り戻します。この症例でも、痛む場所とは別の部位に着目して施術しています。
六層連動操法は、セミナーを修了した認定施術者が全国・海外の治療院で行っています。お近くの認定治療院は「全国の治療院」ページからお探しください。