お久しぶりですね。初めましてではないみたいですね。
はい。3年ほど前に一度診ていただきました。生まれつき股関節が悪くて、その時は足が前に出ず、びっこを引くような歩き方でした。
ボールを当ててゴロゴロしたり、マッサージを受けたりしても良くならなかった、とおっしゃっていましたね。
そうなんです。それが一度の施術で良くなって、一度も戻らずに、悪かったことを忘れてしまうくらいでした。それからずっとYouTubeも拝見していました。
この方は先天性の股関節(臼蓋形成不全)で、片側はすでに人工の股関節、もう片側は自分の骨のまま骨切り術を受けています。3年前に良くなったのとは逆の側が、今度は不安定になってきました。前は「奥が詰まる」感覚でしたが、今回は右の足が前に出づらく、つまずくようになったといいます。
病院では、こちらもいずれ人工にしないといけないかもしれない、と言われました。でも、できればもう少し自分の骨で保ちたいんです。
その気持ちを大事にしたいですね。ふらつきながら歩いているうちに、転んでしまったのですね。
10月のはじめに転倒して、手首を骨折してしまって。それからずっと固定したままなんです。そうしたら、あちこちがおかしくなってきて……。
手首をかばう生活が続き、左の肩や背中が上がらなくなり、肘もひねったような違和感が出ました。右は右で使わないようにしているうちにガチガチに固まり、体はよろよろとしてバランスを取りづらい。「もう全身がだめなんじゃないか」と不安を抱えての来院でした。骨折した手首はまだ炎症があり、直接は触れられません。沖倉先生は、痛む股関節そのものよりも、全身に広がった不調のつながりを診ていくことにしました。
歩いてもらうと、右に体重が乗りにくく、左へ体がぶれます。仰向けで右足を伸ばして支えてもらうと、沖倉先生が指2本、さらに1本で軽く押しただけで足が下りてしまいます。本来なら指では抑えられないはずの脚が、まったく力を受け止められません。
右に体重を移そうとすると、そのまま左へぶれてしまいますね。ここまで体重を運べないから、力が入らずに怖いんです。
フラフラします。右足だけで立つと、やっぱり不安定で。
階段の昇りは太ももの前の筋肉が使えるので力が入る。けれど、外側の筋肉に力が入らないんです。横向きで脚を上げて、この位置で保っていられますか。
全然無理です。自分では、これくらいしか上げられません。
脚の外側に力が入らない——これこそが転倒の原因だと沖倉先生は見立てます。右に体重を乗せた時、外側の筋肉が働かなければ体を支えきれず、そのまま転んでしまう。指1本でも脚が上がらないほど、この筋肉が使えなくなっていました。
右側で踏ん張った時に外側が使えないと、そのまま支えられずに転んでしまう。ここがちゃんと働いていれば、転ばずに済んだはずなんです。
腕からの影響を探ってみますね。……やっぱり股関節に来ています。上半身はそれほど悪くない。首と喉のあたりが良くない。親指から首、そこから股関節の前の外側へつながっている。手を怪我したことが響いていました。
手のケガが股関節に関係しているなんて、思いもしませんでした。
先天性の股関節(臼蓋形成不全)では、骨頭にかぶさる骨盤側のお皿が小さく、特に女性は幅が狭くなりやすいため外れやすい。それが背景にあるうえに、今回は手首のケガをかばった緊張が、親指から首を通って股関節の外側の筋肉まで及んでいました。沖倉先生は、痛む股関節を直接ほぐすのではなく、この一連のつながりを股関節の外側から首へとたどって整えていきます。
今から外側の筋肉が使えるようにしていきます。反対の手でこう触っていきますよ。……ちょっと待ってね。ここ、痛くなるでしょう。
あ、痛いというか、押されると気持ちいいです。
ここにありましたね。……取れました。
なんだか、すっと動いた感じがします。あ、すごい、足が動くようになった。
これ、上に上げてみて。上がるようになりましたね。
すごい、上がるようになった。本当に楽になりました。前に行かないと思っていたんですが、後ろというか、外側に行かなかったんですね。
先ほどは指2本で押し下げられていた脚に、今度はしっかり力が入ります。横向きの脚上げも、外側の筋肉で自分から上げられるようになりました。最後に立って歩いてもらうと、右足だけで体重を受けても揺れず、まっすぐ滑らかに歩けます。
さっきは指2本ですっと下りたのに、今はかなり力が入りますね。左右バランスよく体重が乗るようになったので、足の違和感もつまずきも減っていくはずです。
自分でも、右にしっかり力を入れ替えられているのが分かります。本当に全然違います。足が上がるから、もう怖くないんだと思います。
今日いちばん診てほしいのは、どこですか。
右の股関節です。足が前に出づらい感じがして。こちらは歳の時に骨切り術をした、自分の骨のほうなんです。
なるほど。手首を怪我した影響もあってか、今は全身に不調が出ているんですね。炎症している手首の中は直接触れないので、全身とのつながりから診ていきます。
お願いします。左の肩も背中も上がらないし、肘もひねったようで、右はガチガチ。よろよろしてバランスが取れないんです。
まず歩き方から見ますね。右に力が乗りにくい。右足を伸ばして支えてください。……やっぱり弱いですね。指2本で押しますよ。ほら、全然入らない。
えっ、そんな軽い力で下りてしまうんですか。
普通、脚を指2本で抑えることはできないんです。次は横向きで脚を上げて、この位置で保ってみて。
全然無理です。持ち上げるのもやっとで。
外側の筋肉に力が入らない。これが転倒の原因です。右で踏ん張った時にここが使えず、支えきれずに転んでしまった。腕からの影響を探ると、親指から首、そして股関節の前の外側へつながっています。
手のケガが、こんなところまで響いていたんですね。
ここを触っていきますよ。痛みが出るところがあるはずです。……ここにありました。取れましたよ。立って歩いてみましょう。
さっきと全然違います。右足だけでも、全然いけます。まっすぐスムーズに歩けている感じがします。
今回は手のケガの影響が加わって、右の股関節の内側の筋肉から手のほうへ緊張が及んでいました。首の筋肉を通って、この半身が重だるくなっていたんです。
すっきりしました。触ってほしかったところに届いて、伸びる、抜けるような感じがして、その後が全然違うんです。
骨切りをした側も、手で探ったかぎり進行はそれほどしていません。骨頭と受け皿の滑りも、それほど異常ではありませんでした。
心強いです。本当にありがとうございます。軽くなったのと、歩き方が滑らかになったのが、自分でもまったく違うくらいで。劇的に変わりました。
股関節の不安定感・転倒という悩みを抱えた方の症例です。足が思うように前へ出ず、転倒して手首を骨折した女性という生活上の困りごとから、問診と動作検査、施術前後の変化までを紹介しています。
六層連動操法は、痛みの原因を痛む場所だけに求めません。皮膚から骨まで六つの層の癒着や、筋膜のつながりをたどり、離れた部位(お腹・胸郭・首・過去の手術痕など)から動きを取り戻します。この症例でも、痛む場所とは別の部位に着目して施術しています。
六層連動操法は、セミナーを修了した認定施術者が全国・海外の治療院で行っています。お近くの認定治療院は「全国の治療院」ページからお探しください。
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