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AFTER RADIATION THERAPY

放射線治療のあと首が硬い・引きつれる
首ではなく、のどと胸郭から引っぱりをほどく

頭や首のがんで放射線治療を受けたあと、首の皮膚や筋肉がつっぱる、振り向きにくい、のどの前が引っぱられる。治療から年月が経っても、こうした感覚が続くことがあります。六層連動操法は、放射線で硬くなった組織そのものを元に戻すのではなく、硬くなった組織が首を引いている方向をたどり、のどと胸郭の側から引っぱりをほどくという見方をします。

この記事のポイント
  • 放射線の照射で皮膚や筋肉が線維化して硬くなるのは、よく見られる後遺症。首のこわばり、口の開けにくさ、肩の動きにも及ぶ
  • 変えられないのは線維化した組織そのもの。変えられるのは、その組織がのど・胸郭・首を引き続けている引っぱり
  • 中咽頭がんの治療から8年、波打つような引きつれが続いた方は、のどの癒着が体の前側から首を引き、胸の側から縮めていた

放射線治療のあと首が硬くなるのはなぜか

頭頸部がんの放射線治療では、照射した範囲の皮膚や筋肉が線維化して硬くなることが、よく見られる副作用として報告されています。治療を終えてから1年ほどのあいだに現れ、時間とともに進むことがあり、首のこわばり、口の開けにくさ、痛みにつながります。照射の量や範囲、手術や抗がん剤との併用で程度は変わります。後遺症の診断や再発との見分けは放射線治療の専門医がもっとも的確に行えるので、首のこわばりが急に強くなった、しこりや腫れが出た、飲み込みにくさが増したという変化は、先に担当医へ伝えてください。

六層連動操法が見るのは、線維化した組織そのものではなく、それがどこを引いているかです。のどのまわりの膜は、首の前側の深い筋肉を通って頭の底へ、下は胸郭の内側、心臓を包む膜、横隔膜へと続いています。照射や手術のあとに膜どうしが貼りついて残ったもの(癒着)は、この縦のつながりを前から引き、首は前へ引かれたまま回せなくなります。首を回すと体ごと回ってしまうのは、首の筋肉が悪いのではなく、首の前の引っぱりが強すぎて首だけでは回れないからです。

8年前に18時間におよぶ中咽頭がんの手術を受け、その後リンパ節への転移と再発で放射線治療と抗がん剤を続けてきた方の症例があります。初めは刺すような痛みだったものが、やがて筋肉が縮んで引きつれるような感覚に変わりました。この方自身、オステオパシーに25年取り組んできた施術家です。自分が学んできた筋膜の考え方は放射線治療のあとの体にはあまり当てはまらないと感じていたところ、筋膜の連続性と癒着を追いかける施術を見て、自分の状態に合っていると考えたと話しています。

首の筋肉を横から見た図

首の前側の筋肉(胸鎖乳突筋・斜角筋)。のどの癒着はこの前側のラインを引いて首を回せなくする
出典: OpenStax College, CC BY 3.0

横隔膜を下から見た図

横隔膜(下から見た図)。のどから胸郭の内側、心臓を包む膜、横隔膜へと縦に続く膜が、首を下から縮める
出典: OpenStax, CC BY 4.0

図1 首の前側の筋肉と横隔膜。のどの癒着は前から首を引き、胸郭の内側から首を縮める。線維化した組織そのものではなく、この引っぱりをほどく
画像は Wikimedia Commons の公開画像(各出典・ライセンスを表記。英語のラベルは日本語に置き換えた派生版)。記事の症例の方のものではない。
炎症から修復、癒着へ進む3段階の図
炎症から修復、癒着へ進む3段階の図(スマホ用)
図2 炎症が起こると、体は傷をふさぐために線維を集めて修復する。そのとき、本来は別々に滑るはずの層同士が結ばれてしまうのが「癒着」。
お腹の癒着から攣縮がライン状に広がり、離れた首や膝に痛みが出る図
お腹の癒着から攣縮が広がり離れた場所が痛む図(スマホ用)
図3 お腹の癒着(赤)から、筋膜のつながりに沿って攣縮のライン(金の点線)が上下に広がり、首・肩や膝など離れた場所に痛み(赤い輪)として現れる。

首を揉んだり伸ばしたりすると危ない理由

照射を受けた皮膚は傷つきやすく、傷の回復も遅れやすいことが知られています。硬くなった首を強く揉んだり、無理に伸ばしたりすると、組織を傷めて新しい癒着を増やします。線維化した部分を直接ほぐそうとする発想そのものが、放射線治療後の首には合いません。

症例の方の動作検査では、首を左右に回すとどちらも途中で止まり、体ごと回ってしまいました。横に倒すと背骨の下のあたりに違和感が出て、後ろに反らす動きはほとんど出ません。首まわりには波打つような引きつれ感があり、歩くときは杖があるほうが安定し、階段の下りでは膝が抜けそうな怖さがあったそうです。首の硬さが足元の不安定さまで作っていたことになります。沖倉はこのふらつきを、首元から下へ広がったこわばりのために太ももやお腹の奥の筋肉が力を出しにくくなっている、と説明しています。

表面を揉む施術と、深部の癒着をほどく六層連動操法の違い
揉む施術と癒着をほどく六層連動操法の違い(スマホ用)
図4 表面を揉む施術は浅い層で止まり、深い層の癒着は残る。六層連動操法はテコの原理で深い層に届き、癒着そのものを剥がす。

六層連動操法が確認すること

六層連動操法の考え方そのものは 癒着と痛みの考え方 にまとめています。ここでは、この症状で何を確認するかだけを書きます。

放射線治療後の方には、担当医の了解を得たうえで、照射を終えた時期、照射した範囲、手術で切った場所、皮膚の状態を伝えてもらいます。首そのものには強い力をかけません。首の回旋・側屈・後屈の止まる位置と、のどの前・胸郭の内側・横隔膜の硬さを確認し、首を引いている出発点を探します。

  1. 動きを確認首の回旋で体ごと回らないか、側屈でどこに違和感が出るか、後屈がどこまで出るか、歩行と階段の安定を整理する
  2. 原因をたどるのどのまわり、胸郭の内側、心臓を包む膜、横隔膜で、首を前と下から引いている癒着を探す
  3. 癒着を剥がして再確認のどの前から胸郭の裏側、心臓のまわりの深いところへ角度を変えながらゆるめ、首の動きと足裏の感覚を比べる

症例では、最初に手を当てたのは痛む首ではなく胸郭でした。触れた印象は「硬すぎる」。のどのあたりの癒着が体の前側から首を引き、胸の側から縮めていると見立て、のどの前から胸郭の裏側、心臓のまわりの深いところへとゆるめていきました。施術の途中、本人は「もうすでに首が軽くなっています」と話し、施術のあとは足の裏が地面についている感覚が戻り、階段も手すりにほとんど頼らずに上れています。首の回旋や側屈、いちばん動かなかった後屈も動きが大きくなり、本人は「悩んでいた8年間の中で、今が最高に解放されています」と話しました。線維化した組織の範囲は人によって違うので、どこまで引っぱりをほどけるかは検査でたどります。

検査、施術、再検査という六層連動操法の施術の流れ
検査、施術、再検査という施術の流れ(スマホ用)
図5 六層連動操法の施術の流れ。感覚に頼らず、施術の前後で動きと痛みの検査をくり返し、変化が出なければ別の層・別の場所を検査し直す。

実際の施術での会話

放射線治療のあと首が硬い・引きつれるの方の症例動画で、実際に交わされたやり取りです。沖倉が原因を伝えた言葉と、剥がした直後の反応を、動画の言い回しのまま引用しています。

沖倉「そこが似ています。触ってみると…硬すぎる。喉の癒着なので、そこを外さない限りこの症状は改善しません。ディープフロントラインの中部・前部、とくに左が前から引っ張っています。」

患者さん「横隔膜心膜靭帯とは違うんですか。」

症例: 中咽頭がん治療後、8年続いた首の痛みと引きつれに向き合う(がん治療後の首痛)

沖倉「違いますね。こういう風に動いているのが分かります。」

患者さん「肩甲骨とか、この肩のところも常に重くて痛かったんですけど、今すごい軽くなって。」

症例: 頸椎症で首が痛くない時がない——27歳の脾臓破裂の癒着が全身を固めていた(頸椎症・首の痛み)

沖倉「ちょっとやってみましょう。なんでこういう風に全身に癒着っぽいのが起こるのかというと、皮膚の症状なんです、実は。アトピーだとか、そういうことで皮膚の滑走が悪くなっちゃう。」

患者さん「あ、そうなんですか。」

症例: 線維筋痛症で20数年の全身の痛み——皮膚の炎症が招いた肋骨と顔の癒着(線維筋痛症)

炎症が続くと、新しい癒着ができる

放射線治療のあとは、照射した範囲の皮膚と粘膜が炎症を起こしやすい状態が続きます。のどの粘膜の炎症がくり返されると、のどのまわりの膜はまた硬くなり、首の引っぱりが戻ります。味覚や飲み込みの変化で食事が偏りやすい時期でもあるので、担当医や栄養士と相談しながら、のどと胃を荒らさない食事を選びます。

のどと胃の粘膜を守るために。

  • 熱すぎる・辛すぎる・酸の強い飲食(のどの粘膜を荒らす)
  • アルコールとタバコ(照射後の粘膜にはとくに負担)
  • 寝る直前の食事(逆流がのどを刺激する)
  • 硬い・乾いた食べものばかりにならないように、飲み込みやすい形に

炎症のもとになる食事・習慣の全体像は 癒着Q&A に、癒着ができる流れは 癒着と痛みの考え方 にまとめています。

施術の様子(動画)

放射線治療のあと首が硬い・引きつれるの施術では、痛む場所ではなく原因の場所をたどります。癒着を剥がした直後に動きがどう変わるかを、編集せずに公開しています。

中咽頭がん治療後、8年続いた首の痛みと引きつれに向き合う(YouTube)

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同じ症状の施術症例

放射線治療のあと首が硬い・引きつれるで来院した方の記録です。問診・動作の確認・原因の見立て・施術後の変化を、症例ごとに読めます。

症例集をすべて見る →

よくある質問

がんの治療歴があっても受けられますか?

担当医の了解を得たうえで受けてください。照射を終えた時期、照射した範囲、手術で切った場所、今も通院や検査を続けているかを施術者に伝えます。強い力で首を動かす施術はしません。

線維化した組織は柔らかくなりますか?

放射線で線維化した組織そのものを元に戻すことは目的にしていません。変えるのは、その組織が首を引き続けている方向の引っぱりです。症例の方は首の回旋・後屈と足裏の感覚が変わっています。

首が痛いのに胸を触るのはなぜですか?

のどの癒着が体の前側から首を引き、胸の側から縮めているからです。症例では最初に手を当てたのは胸郭で、首には強い力をかけていません。

六層連動操法を受けられる治療院

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この記事について

六層連動操法事務局が、沖倉国悦の臨床経験と公開している施術動画・症例記録をもとに作成しています(作成日:2026年10月17日)。「癒着」は六層連動操法の臨床上の見方を含む言葉です。記事の訂正・ご質問はお問い合わせページへお寄せください。